Newsletter of FCG Group.
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Monday November 5th, 2018Australia
『豪州税制における仮想通貨の取り扱い』
仮想通貨の代表「ビットコイン」が2008年に発明がされてから10年が経過した。現在では「仮想通貨」を取り扱ったことがなくてもその存在は知っている人が大半という状況である。
投資家や投機家の期待と不安などが入り混じる中、仮想通貨は現在も発展途上中であると言える。
本稿ではこの仮想通貨について、豪州税制においてどのような取扱が行われているか例を交えて解説する。
■豪州税制における仮想通貨
豪州税務当局(以下、当局)は「仮想通貨」を暗号技術を用いた「デジタル化された資産」であり、各国の中央銀行や政府機関とは独立した運営下にて取り扱われていると解釈されている。
当局では仮想通貨についてのガイダンスを発表するにあたり、ビットコインもしくはビットコインと同等の特長を持ったデジタル通貨を念頭に置いている。
■仮想通貨取引の種類
1. 仮想通貨の譲渡(有償・無償のどちらも対象)
2. 仮想通貨の売買(異なる種類の仮想通貨との交換も含)
3. 仮想通貨を通常の通貨(例:豪ドル)との交換
4. 仮想通貨を使用して物やサービスを購入
仮想通貨の使用管理方法は大まかに以下の3つに分類される。
Ⅰ. 個人資産目的
Ⅱ. 投資目的
Ⅲ. 事業目的
以下、上記の目的ごとに解説をする。
Ⅰ. 個人資産目的としての仮想通貨
個人消費目的の物やサービスの購入に仮想通貨を使用する場合にはこの仮想通貨は個人資産と見なされ、AUD 10,000以下の収益の場合にはキャピタルゲインタックスの対象外となる。
・仮想通貨が個人資産と見なされる例:
A氏がAUD 270で仮想通貨を購入。この仮想通貨で趣味のコンサートチケットを購入。
もしも直接豪ドルでコンサートチケットを購入した場合にはAUD 300の支払いが発生していた。
・仮想通貨が個人資産と見なされない例:
B氏は仮想通貨を保有し、有利な交換レート時に仮想通貨を売買。B氏は適時、物やサービスの購入に仮想通貨を使用。
この場合にはB氏は投資目的で仮想通貨を保有していると解釈され、個人資産とはみなされない。
Ⅱ. 投資目的としての仮想通貨
仮想通貨を投資目的で保有する場合には個人資産におけるキャピタルゲインタックスの免除は適用されず、仮想通貨を処分した時点で取得価額よりも売却価格が大きい場合にキャピタルゲインが発生し、納税義務が発生する。投資のポートフォリオの一部に仮想通貨を使用する場合も同様の扱いである。なお、仮想通貨保有時に市場価格もしくは仮想通貨保有額の変動があっても、仮想通貨を処分する時点まではキャピタルゲインは認識されない。異なる種類の仮想通貨の交換時には市場価格を用いて仮想通貨を豪ドルに換算する必要がある。仮想通貨を12か月以上保有後に処分する場合にはキャピタルゲインタックス・ディスカウントの適用により納税額を減らすことが可能となる。
例:
・ C氏が2017年7月5日 100コインXをAUD 15,000で購入
・2017年11月15日 20コインXを100コインYに交換
・2017年11月15日 時点での100コインYの市場価格はAUD 6,000
この場合、C氏はキャピタルゲインを算出するにあたり、AUD 6,000の資産売却売上を得たということになる。
Ⅲ. 事業目的としての仮想通貨
仮想通貨の取引自体が事業内容に含まれる場合には仮想通貨は「トレーディング目的で保有する棚卸資産」と見なされる。
この場合、仮想通貨はキャピタルゲインタックスの対象にはならない。
事業目的の仮想通貨の取引から発生する収益は「通常の収益」と見なされる。また、仮想通貨を入手する際に発生した経費の損金計上が認められる。
例:
・D氏は仮想通貨取引事業を行っている。2017年12月15日に1,500コインXをAUD 150,000で購入。
・同日に1,000コインをAUD 200,000で販売。
この場合、D氏はAUD150,000を経費計上、及びAUD 200,000を収益計上することになる。
ただし、仮想通貨の売買を行っている人の全てが事業を行っているとはみなされないことに注意が必要である。
事業を行っているというのは通常、以下の状況である。
・商業目的での活動であること。
・事業計画があり、その計画に基づいて資産運用が行われていること。
・会計記帳記録があり、かつビジネスネームや取扱商品に対する宣伝活動があること。
・収益を上げる意思があること。(短期的には収益性がない場合でも、将来の収益が見込めると判断している場合も含む。)
・ 通常は繰り返し行われる活動であること。(ただし、状況によっては一度のみの取引が事業活動であると見なされる場合もある。)
■事業開始時期
仮想通貨取引事業を行うにあたり、事業準備期間は事業の開始前と見なされ、その間に受領した金銭は課税対象の収益とはみなされない場合があることに注意が必要である。
この場合、発生した経費を損金計上することは出来ない。
■仮想通貨売買とGST
2017年7月1日以降、仮想通貨の売買はGSTの対象ではない。従って、仮想通貨を販売する際にGSTの支払い義務はない。
また、仮想通貨を購入に対して、GSTの控除及び還付請求することも出来ない。
■商品の売買に仮想通貨を使用する場合
仮想通貨取引事業ではない事業を行っているが、物やサービスの提供に対して、仮想通貨を受領する場合には、仮想通貨はその他資産として取り扱うことになる。その際に受領した仮想通貨は公正市場価格を用いて、豪ドルに換算して収益として計上する必要がある。一般的には認知度が高い仮想通貨取引所の換算レートを用いて豪ドルに換算されることになる。仮想通貨を使用して支払いを行った場合には、購入した商品の公正市場価格を用いて豪ドルに換算する。
■仮想通貨を従業員への給与として使用する場合
雇用契約において「Salary Sacrifice Arrangement」と呼ばれる現金(豪ドル)以外で給与を受給する取り決めの存在の有無により、取扱い方法が異なる。
・「Salary Sacrifice arrangement」がある場合
従業員への給与を豪ドルの代わりに仮想通貨を使用するという雇用主と従業員間で正式な取り決めがある場合には、仮想通貨の支払いはフリンジベネフィットとみなされ、雇用主はフリンジベネフィットタックスの支払い義務が発生する。
このフリンジベネフィットは「Property Benefit」のカテゴリーに分類され、仮想通貨の支給時の価値に基づいて、雇用主はフリンジベネフィットタックスを払うことになる。
・「Salary Sacrifice arrangement」がない場合
従業員が通常の給与受給資格がある前提で、仮想通貨での給与の受領を希望するような場合、従業員は通常の給与を受領したと見なされ、雇用主は豪ドルに換算した上で、源泉徴収義務が発生する。
■仮想通貨の紛失や盗難
仮想通貨にアクセスする際のプライベートキー(暗号)や盗難が発生した場合にはキャピタルロスを計上することになる。
ただし、ここで発生する問題点は仮想通貨保有者であることや仮想通貨へのアクセス方法を失ったことの証明方法である。
以下の情報を保有していることが証明条件として規定されている。
・プライベートキーの取得時期
・プライベートキーの紛失時期
・仮想通貨ウオレットのアドレス(例:ビットコインアドレス=銀行口座情報に類似した情報)
・仮想通貨の購入価格
・ 紛失もしくは盗難時の仮想通貨残高
・ 仮想通貨ウオレットが該当者の管理下に置かれていたことの証明(例:該当者個人情報と取引が連携していたことの証明)
・ 仮想通貨ウオレットを保存していたコンピュータハードウェアの保有事実
・ 仮想通貨売買時の取引時の使用口座保有の証明もしくは該当者個人情報と取引が連携していたことの証明
参照: