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Singapore News Letter(2019年8月号)

2019年08月26日シンガポール

シンガポールM&A の現状と増加要因

 

2019 年1 月から6月までの日系企業によるASEAN地域企業へのM&Aは86 件であり、そのうち日系企業によるシンガポール企業へのM&A が最も多く 35 件という調査結果があります(参考:株式会社レコフ調査)。この数値が示すように、日系企業によるシンガポール企業へのM&A に対する関心度は非常に高い水準にあり、その背景には、下記のような要因があると考えられます。

 

1. 会計・税務の透明性

日系企業がクロスボーダーM&A を検討するうえで、ディール・ブレーカーとなり得る要素の一つが、会計・税務の不透明性です。M&A 対象企業の財務諸表が完全に信頼できない場合や脱税が日常化しているような場合、解決策を見出すことやリスクの見積りが困難となり、ディール・ブレイクに繋がる可能性があります。

この点、シンガポール法人は原則として会計監査が要求され、当該会計監査は比較的厳格に実施されることから、監査済財務諸表は一定レベルの水準にあると考えることができます。また、法人税の確定申告は基本的に監査済財務諸表をもとに行われるため、法人税申告のレベルも一定程度担保されると言えます。このような、会計・税務の透明性という本質的な要素の担保が、M&A 増加の要因の一つと考えられます。

 

2. 豊富な売り案件

シンガポールをベースとするM&A アドバイザーの情報を総合すると、近年シンガポールの日系企業向け売り案件数が増加傾向にあり、その背景には、事業承継問題と日系企業の誠実さがあると言えます。まず、事業承継問題に関して、シンガポールの建国(1965 年)と同時期に事業を興した経営者が事業承継問題に直面しており、承継方法の一つとしてクロスボーダーM&A が選択されていることが挙げられます。次に、日系企業の誠実さに関して、日系企業はM&A 後も従業員や取引先を大切にするイメージを持たれています。この点、シンガポールは国土の小さな国であり、経営者の会社売却後の生活まで考慮すると日系企業に売却した方が、その後のトラブルに見舞われるリスクを低減できると言えます。このような、特に日系企業を中心とした売り案件の豊富さが、M&A 増加の要因の一つと考えられます。
なお、豊富な売り案件があるとは言え、日系企業の場合、意思決定の遅れが原因でM&A の機会を逃すこともあります。そして、シンガポールのM&A アドバイザーには多くの売り案件が集まっており、買手を見定めているのが現状です。従って、アドバイザーからの情報収集に際しては、買手としての目的(業種・規模・時期等)を明確化したうえでのコンタクトが、求められていると言えます。

 

3. 英語という公用語

ASEAN 地域では現地言語が公文書や取引文書に使用されるため、日本人は現地の従業員等の説明に依拠せざるを得ず、言葉から生じるリスクを排除できません。一方、シンガポールは英語が公用語であるため、当該リスクの排除もしくは低減が可能です。共用語が英語であることも重要な要因となります。

 

<お問い合わせ先>

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8 Temasek Boulevard, #35-02A Suntec Tower Three,Singapore 038988
TEL:+65 6338 3180 | FAX :+65 6338 3187
公認会計士 伊藤 潤哉 Junya Ito (C.P.A (JAPAN))
E Mail:ju.ito@faircongrp.com