Newsletter of FCG Group.
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Wednesday September 18th, 2019Singapore
シンガポール税務当局の課税状況
シンガポールは、シンプルな課税体系と多くの税制優遇等によるビジネス環境の整備された国ですが、税務上の逸脱行為 (Tax Crime) に対しては、厳しい処分が行われています。本稿では、シンガポール税務当局であるIRAS(Inland Revenue Authority of Singapore)が公表するTax Crimeの事例を分析し、IRASの調査傾向や処分結果を検討することで、社内の経理体制やコンプライアンスの見直しのための情報を提供したいと思います。
1.Tax Crimeの分析
IRASは、ウェブサイト上において定期的にTax Crimeを公開しています。2016年から2019年8月の公開事例は45件であり、分析結果は以下の通りです。
(金額や内容は、説明のため適宜修正しています。)
●CIT
45件中、20件(処分対象数は26件)がCIT(Corporate Income Tax)の事例として開示されています。開示内容のサマリーは、以下のとおりです。
*1) 個人事業主の個人事業に係る罰金はCITとして集計
*2) 概算額を1SGD=80円で換算
*3) PIC : Productivity and Innovation Credit
CITの開示事例に関して、脱税とPIC不正利用が逸脱行為の大部分を占めています。また、処分対象は法人、取締役、個人事業主が含まれ、罰金額は80,000円から1億円超と金額の多寡に関係なく開示されていることが分かります。さらに、開示事例の中には脱税やPIC不正利用により、禁固刑が科せられるケースも散見されます。
●GST
45件中、22件がGST(Goods and Services Tax)の事例として開示されています。開示内容のサマリーは、以下のとおりです。
*1) 概算額を1SGD=80円で換算
*2) TRS : GST Tourist Refund Scheme
GSTの開示事例に関して、脱税とPIC不正利用が逸脱行為の大部分を占めています。また、処分対象は法人、取締役、個人事業主、従業員や個人が含まれ、罰金額は160,000円から64,000,000円とCITと同様に金額の多寡に関係なく開示されていることが分かります。また、開示事例の中には脱税やTRS不正利用、GST不正請求により、禁固刑が科せられるケースも散見されます。
●その他
その他のケースとしては、個人所得税や印紙税の脱税等が開示されています。
2.分析を踏まえた対応
分析結果のとおり、IRASは金額の多寡や組織の規模に関係なく、広く調査を実施し、処分を下していることが分かります。日系企業の中には、シンガポール法人が少人数体制であることや、取引金額が小規模であるという理由を以って、コンプライアンスをあまり重要視しないケースがありますが、上記の分析結果を踏まえれば、それはIRASの調査実態に即した対応ではないと言えます。
本分析結果によると、下記①、②の対応策等によりコンプライアンスを遵守することが重要であると考えられます。
① 脱税やIRASへ合理的な説明のできない申告処理、優遇税制(特にPICやTRSなどトレンドに応じた制度)の不正利用などを生じさせない経理体制の構築
② 本社経理部門や外部専門家による定期的なレビュー
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公認会計士 伊藤 潤哉 Junya Ito (C.P.A (JAPAN))
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