FCGグループのニュースレターをお届けします。
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2020年05月14日アメリカ
第4回:Paycheck Protection Program (PPP) Round 2/給与保護プログラムの第2ラウンド
(中小企業向け債務免除可能ローンプログラムの続報)
ニュースレターの第一回目でお伝えしていた、一定の条件を満たせば返済免除となる中小企業への救済ローンを提供するPaycheck Protection Program、通称PPPと呼ばれる給与保護プラグラムに、3,100億ドルの大幅な追加予算が認められました。開始からわずか2週間で3,490憶ドルの予算を使い果たし受付停止となったPPPですが、4月27日よりローン申請の受付が再開しました。約2週間が経過した現在もまだ予算切れにはなっていません。COVID-19の爆発的な流行を受け大至急導入されたPPPの第1ラウンドでは、中小企業や貸し手である金融機関から多くの問題点が指摘されていました。今回のニュースレターでは、PPP第2ラウンドの修正点や、現在起きているPPPに関連した問題についてお知らせします。
PPPの概要
基本的なローンの内容や使用用途などのルールに変更はありません。PPPの詳細については弊社発行のニュースレター第1号をご参照ください。
PPP第1ラウンドの問題点
・PPPは中小企業向けにデザインされた救済ローンだが、本来なら対象にならないはずの大企業や上場企業が申請を行い、億単位の高額な融資を受けていた。この問題が報道され世間から強烈なバッシングを受けたため、ローンを返金した企業もあるが、PPPの目的を無視して、当初から返済免除を受けない予定の超低金利ローンとして使用する企業も出ている。
・SBA (中小企業庁)によるとPPPローンの申請は “先着順” に処理されるはずだが、大銀行は手数料を目当てに高額なローンの申請を行った企業を優先して処理しているとして中小企業からの不満が続出し、JPモルガン・チェイス銀行やウェルズ・ファーゴ銀行などを相手に集団訴訟が起きている。貸し手の金融機関にはローンの金額によって、1~5%の手数料がSBAから支払われることになっており、非営利団体であるNPRの報道によると、PPPの第1ラウンドだけで貸し手の金融機関は合計$100億ドル以上の利益を得ている。
・本来のPPPの対象であるべき中小企業の多くが、財務や税務の専門部署を持っておらず申請手続きの方法や必要書類などの情報を揃えるだけでも一苦労で、迅速に申請できなかった。またSBAは認定を受けた金融機関であれば過去の取引実績がなくても融資は可能としていたが、実際は今まで取引がなかったり、特に借入したことがない中小企業の場合はローンが拒否されるケースが多く見られた。
PPP第2ラウンドの修正点及びアップデート
大企業や上場企業、また貸し手側も大銀行に有利に動いてしまった第1ラウンドの状況を顧みて、米国政府は中小企業へ配慮すべく、第2ラウンドにいくつかの修正点を加えました。また本来なら対象にならないはずの企業が融資を受けている事実を踏まえ、そのような企業に対しての警告がありました。
・追加資金の3,100億ドルの内、600億ドルが中小規模の金融機関専用の融資枠として指定され、さらにその内300億ドルは、資産が100億ドル以下の地域に根付いた小規模な金融機関を通して融資する。
・受付再開後SBAの貸し手用オンラインシステムにアクセスが殺到し、長時間サイトがクラッシュしてしまう自体が起きたため、受付再開から2日後に資産が10億ドル以下の小規模金融機関のみがSBAのシステムにアクセスできる、8時間の特別枠を用意した。
・PPPへ申請する企業は “COVID-19の影響を受け他に資金を調達する術が無く、事業の継続のためにはPPPローンが不可欠である” ことを真実に基づき宣誓する必要がある。既にPPPによる融資を受けた上場企業や、大企業が所持している中小企業に対して、SBAは株式発行や投資家などPPPを使わなくとも他にも資金を集める方法がある場合は、真実に基づいて申請したとは見なされない可能性が高いと宣言した。もし既に融資は受けたがやはりPPPは必要ないと考え直して返金を希望する企業は、5月14日までに返金すれば真実に基づいて宣誓したと見なされる。
・特に高額の融資を受けた上場企業数社には、政府から返金要請の通知が出された。またムニューシン財務長官が200万ドル以上の融資を受けた企業には、返済免除を許可する前に、SBAがローンの必要性に関する誠実な宣誓義務の要件を満たしているかを個別に審査すると警告した。
大企業と大銀行が優位に立ったPPP第1ラウンドに比べ、中小企業と中小金融機関への配慮や大企業への警告が行われた第2ラウンドですが、この配慮が功を奏したのか、SBA提供のデータによると第一ラウンドの平均ローン金額が20.6万ドルだったのに比べて、5月8日付けの第2ラウンドの平均は7.3万ドルと大幅に減っており、より規模の小さい企業が融資を受けられていることを示唆しています。しかし、特にレストラン業界などでは、州や郡の外出自粛命令により事業再開のめどが立たず、返済免除の条件を満たすことができないため、折角融資を受けることができても返金という苦渋の選択をする中小企業も出てきています。また融資を受け、何とか一息ついた中小企業も、これから事業の立て直しを行いながら融資の使用用途のトラッキングをし、必要に応じて再雇用を行い、銀行に返済免除を認めてもらう手続きを行う必要があります。
合計6,590億ドルという天文学的な金額が投じられたPPPですが、税務や財務、また人事などの専門家を社内に持たない中小企業にとっては、まだこの先も問題は山積みであると言えそうです。幸いなことに、米国ではこのような業務を含め、多くの管理運営業務は、専門家にアウトソースして、サポートしてもらうことが比較的容易です。COVID-19収束後のNew Normalに向けて本業に注力したい中小企業にとっては、専門業務のアウトソーシングは有効なオプションと言えるでしょう。
By 秋保 絵美子
Fair Consulting USA Inc.
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◇涌井 正晴
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