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FCG アメリカ ニュースレター 第14回:雇用形態 – 従業員と独立請負人: CA Assembly Bill 5 (AB 5) - Employee & Independent Contractor

Wednesday September 2nd, 2020USA

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第14回:雇用形態 – 従業員と独立請負人: CA Assembly Bill 5 (AB 5) - Employee & Independent Contractor

 

共和党と民主党の間で行われていた新型コロナウィルス対策の追加法案についての話し合いが、膠着状態となったまま国会は一時休暇に入りました。その間の応急処置として従業員分の給与税の源泉徴収の延期などの大統領令が出されたものの、その有効性は疑問視されており、米国経済の回復は未だに足踏み状態が続いています。そのような状況の中、カリフォルニア(CA)州で今年1月から施行されているAssembly Bill 5 (通称AB5)という法律に基づき、CA州がライドシェアサービスの大手企業であるUberLyftの両社に対して起こしていた訴訟の行方に、現在大きな関心が寄せられています。

 

CA Assembly Bill 5 (AB5) の内容

AB5は、CA州の企業が労働者を従業員と独立請負人のどちらに分類すべきか決定する指標を明確にするもので、20199月に成立し、20201月から施行されています。AB5ではABCテストと呼ばれる以下の3つの条件を規定し、労働者の雇用条件や労働環境が全ての条件を満たさない場合は、独立請負人ではなく従業員として分類することを求めています。

A. 労働者は業務を遂行する際に、雇用主の管理や指揮下にない

B. 労働者は雇用主の主体となる業務(本業)を請け負っていない

C. 労働者は従事している業務と同じ性質の独立した取引、職業、ビジネスを習慣的に行っている

 

AB5は、企業が本来であれば従業員として雇用されるべき労働者を独立請負人として扱うことによる諸税金の納付を含めた様々な雇用主としての責任から逃れることを取り締まり、労働者が得るべき権利を保護する目的があります。

(なお今回のニュースレターでは、主にライドシェアやデリバリーのアプリを使ったギグワーカーに焦点を当てていますが、AB5が規制する業種はこれら限定ではなく、多くの業種に及びます)

 

従業員と独立請負人の違い

雇用形態が従業員か独立請負人かによって、雇用主の責任に関し、主に以下のような違いがあります。

FCGアメリカニュースレター第14回①

このように従業員と独立請負人の場合では、労働者が受けられる権利等に大きな違いがあります。CA州がUber/Lyftに対して起こした訴訟では、両社がAB5Bの条件に特に違反しているとして、独立請負人として扱っているドライバーを従業員に再分類することを求める仮命令が、810日に出されました。これに対し両社は、直ちに仮命令の緊急猶予を求めて控訴し、裁判所に認められたため、控訴審が決するまでは差し当たりドライバーを独立請負人として扱うことが認められています。

 

Uber/Lyftの反応

Uberは以前から、Uberはあくまでドライバーと乗客をつなぐプラットフォームを提供するテクノロジー企業であり、ドライバーはUberの本業を行っていないと主張していました。ひとまずは現状のままCA州で事業を続けられることになった両社ですが、AB5によりビジネスの存続自体が危うい状況が続いています。この緊迫した状況の中、UberCEOであるコスロシャヒ氏がニューヨークタイムス紙で記事を執筆するという大胆な手に出ました。記事の中で氏は、ドライバーの雇用形態を従業員に変えた場合は、雇用できるドライバーの数は激減し、サービスを提供できる地域は限られ、ドライバーは最大のメリットである自由で柔軟な現在の労働スケジュールを失うことを訴え、一方で現状は独立請負人への補償が少なすぎると認めました。その上で、従業員か独立請負人のどちらかを選ばなければいけない現在の雇用システムは時代遅れで不公平だとし、ギグワーカーには第3の道があるべきだと主張しました。

 

3の道とは? – Prop 22

コスロシャヒ氏が話題にした第3の道とは、CA州で今年11月に行う住民投票にかけられる予定のProp 22という法案です。Prop 22は、アプリリケーションを通じてライドシェアやデリバリーサービスを行うドライバーをAB5から除外し、個人請負人として働くことを選ぶ権利を保護するものです。Prop 22の推進団体のウェブサイトによると、Prop 22は個人請負人が柔軟に働く権利を維持した上で、一部燃料費の返金や、最低給与の保証、限定的な福利厚生の提供などを約束しています。Prop 22には、UberLyftに加えDoorDashなどの類似した業態であるデリバリーサービス大手企業も含め、そのキャンペーンに合計1億1千万ドルが投入されたと言われており、Prop 22に反対するカリフォルニア州労働者連盟は、この法案はこれらの企業が労働者への責任や義務から逃れるために作ったもので、ドライバーやその家族は守られないと批判しています。

 

今後の動向

コロナウィルスの拡大による経済の停滞が続き、失業率も未だ10%を超えている中、ギグワークにより生活を支えているCA州民が多くいることは想像に難くありません。自分のスケジュールに合わせ単発の仕事を行えるプラットフォームは、非常事態の最中の貴重な収入源と言えます。一方で、本来であれば従業員であるべき労働者を独立請負人として維持することで、福利厚生や最低賃金、労災保険や失業保険などの様々な責任を回避しようとしている企業があるのも事実です。ギグワーカーの中でも、安定と保護を求めるAB5賛成派と、柔軟性と働きやすさを求めるProp22賛成派に分かれており、政治家や経済学者も巻き込んでの白熱したキャンペーンが行われています。CA州に続きAB5と同様の法案を検討している州も既に出てきているため、CA州民による11月の住民投票の結果は、今後のギグワーク市場に大きな影響を与える重要なものになりそうです。

 

 

By 秋保 絵美子

Fair Consulting USA Inc.

Los Angeles Office

 

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◇涌井 正晴

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【PDF版】FCUS News letter vol.14 Employee & Independent Contractor