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FCG アメリカ ニュースレター 第15回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第1回

Monday September 28th, 2020USA

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第15回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第1

 

日本企業がアメリカでビジネスを行うにあたり、知っておくべき人事・労務に関するルールや慣習について解説します。今後、複数回にわたって解説しますが、初回は、アメリカの雇用機会均等法、 Equal Employment Opportunity(以下EEO) についてご紹介します。

1963年に制定された法律であるEEOは、連邦法を執行する政府機関 EEOC(米雇用均等委員会)により管轄されており、職場および採用活動における人種、宗教、性別、国籍、年齢など様々な個人情報による差別を禁止しています。またこの他にも、州、市等の自治体でそれぞれ独自の法律が存在する場合もあるため、ビジネスを行う地域によって準拠するべき法律を正しく見極める必要があります。差別に厳しく、訴訟が多いアメリカでは、雇用者側がこれらの法律をすべて正しく理解し、職場でのあらゆる差別をしないよう十分に気を付ける必要があります。また採用活動においては、全ての候補者を平等に審査することが重要です。

 

EEOの対象となる活動:

採用、解雇、昇進、賃金、異動、福利厚生、トレーニング、ハラスメントなど

 

EEOが保護する対象者:

採用候補者、現従業員、元従業員

 

EEOが定める差別の種類:

人種、肌の色、国籍、宗教、性別、身体障害、年齢、健康状態、遺伝情報、家族構成、兵役に関する情報など

 

採用活動中の違反例

・求人広告

求人募集の広告を載せる際、性別を限定したり、「大学を卒業したばかりの人」といった表現を使用することで年齢を限定したりすることは禁止されています。日本では一般的な考え方である「新卒」の概念もアメリカには無く、このような表現は、年齢差別と見なされるため使用できません。

・テスト・適性検査

採用の際、候補者に対しテストを実施する際は、募集する職種に関係しているテストでないといけません。また、特定の人にだけテストを受けさせることは差別とみなされる可能性が高いため、全ての候補者に平等に実施する必要があります。

・顔写真

候補者に対して顔写真を要求することは禁止されています。もし、身分証明書が必要な場合は、採用が決定した後に提出してもらいます。

 

面接での質問禁止事項

オンライン求人サイトを運営するCareer Builderによるアンケートでは、5人に1人の雇用者が採用面接にて違法な質問をしてしまった可能性があると回答しています。雇用者は面接の際、EEOにて差別であると定義されている以下のような個人情報に関わる質問をしないように十分に注意する必要があります。

・生年月日・年齢

年齢や生年月日を尋ねることは年齢差別にあたるため、禁止されています。The Age Discrimination in Employment Act (ADEA)では40歳以上の年齢の人に対する差別を禁止しています。また、例え40歳未満の人であっても、年齢によって差別することは禁止されています。未成年でないかを確認することは問題ありません。

・性別

募集する職種に直接的な関係が無い限り、性別を尋ねることはできません。今年6月に、アメリカの最高裁判所はレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(LGBTQ)の人々に対する、職場での差別を違法とする判決を下しました。男・女のくくりだけではなく、多様な性のアイデンティティがあることを念頭に、採用活動中や職場において、差別をしないことが大切です。

・家族構成

候補者の婚姻状況や子供の有無などを尋ねることはできません。扶養家族の有無によって雇用者側が支払う保険料が異なることなどを考えると、雇用者としては聞きたい質問かもしれませんが、職種に関係のない部分で採用を決定することはできません。同様に、妊娠や妊娠の計画についても質問してはいけません。

・国籍・出身地

候補者の国籍や出身地、出身国を直接的に尋ねることはできません。アメリカ永住権または、アメリカ市民権を持っているか、という質問もしてはいけません。候補者の就労資格を確認するために、「アメリカで合法的に働く資格を持っているか?」と尋ねることは問題ありません。どこで生まれ育ったか、という質問はできませんが、どの言語を読み書き出来、流暢に話すことができるのかを聞くことは可能です。

・健康状態・身体的障害など

持病や身体的障害について質問することは禁止されています。特別な身体能力が求められる職種である場合は、募集要項の中にそういった条件をあらかじめ明記しておくのが良いでしょう。

 

アメリカにおける一般的な採用活動の例

上記のように、日本では一般的に求職者が履歴書に記載するような事項や、採用面接で面接官が質問するような項目の多くが、アメリカでは差別とみなされる可能性があります。それでは、アメリカの求職者は履歴書にどのような内容を記載し、面接官は面接でどのような質問をするのでしょうか。

まず履歴書については、アメリカでは自分をアピールするために自分で作成するオリジナルなものという考え方で、既成のフォーマットは存在しないため、求職者が使用するフォーマットや記載する内容は自由です。履歴書に記載される事項の例としては、以下が挙げられます。

・名前や連絡先などの基本情報と、現職(または前職)での肩書き。

最近では、個人のSNSアカウントやブログのURLなどを記載する人もいます。

・今までの経歴を簡単にまとめた自己紹介。

志望理由、仕事に取り組む姿勢など、自己アピールも含みます。

・詳細な学歴および職歴

・資格、特殊能力、得意分野

もちろん、プライベートでの趣味などをアピールとして含めることも問題ありません。

 

採用面接の際に面接官が質問する事項の例としては、以下が一般的です。

・自身の強み、弱み

・志望理由

・前職の退職理由

・採用から〇年後のビジョン、目標

・過去に達成したこと、今までの一番の功績

・他の候補者に比べて自分が優れていると思う理由

このように、”業務やパフォーマンスに直接関係する事柄のみが、採用の判断基準になるべきである”という考え方が根本にあります。

 

セクシュアルハラスメント研修

職場における性差別はEEOにより連邦レベルで禁止されていますが、その中でも職場においてのセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ行為)防止のため、独自のルールを設けている州や自治体があります。

例えば、カリフォルニア州では従業員5名以上の企業は、2年に1度、1時間のセクシュアルハラスメント研修を全従業員に受講させることが義務付けられています。ニューヨーク州では、企業規模にかかわらずすべての雇用者が、全従業員に毎年、州の指定するセクシュアルハラスメント研修を受講させなければいけません。ニューヨーク市においては、従業員15名以上の企業は、新入社員に対し、入社90日以内にセクシュアルハラスメント研修を受講させることが義務付けられています。

 

アメリカでの差別の定義やそれに対する法律は日本と比べて厳しく、日本企業がアメリカでビジネスを行う際には、EEOならびに各自治体における差別禁止法を正しく理解し遵守することが非常に重要です。職場におけるすべての人事決定は、正当な職務上の理由によって実行すべきであることを念頭におき、意識的または無意識的な差別をしないよう細心の注意を払う必要があります。また人事業務においては、アメリカの複雑な労務・人事ルールに対応できる専門家の意見を積極的に取り入れた上で、明確な就業規則や人事管理フォーマットを整備しておくことも有効といえるでしょう。

 

 

By 上野 裕美

Fair Consulting USA Inc.

Los Angeles Office

 

お問い合わせ

Fair Consulting USA Inc.

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Tel: +1-310-792-7059

◇涌井 正晴

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