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FCG アメリカ ニュースレター 第18回:アメリカ大統領選挙の仕組み

2020年10月28日アメリカ

第18回:アメリカ大統領選挙の仕組み

 

11月3()に行われるアメリカ大統領選挙までついにあと1週間となり、アメリカ国内は選挙の話題で持ち切りです。世界一の大国であるアメリカの次期大統領が決まるこの選挙は、国際的にも重要なイベントであり、世界各国で動向が注視されています。今回の大統領選挙は、共和党の現職・トランプ大統領と、民主党のバイデン氏が次期大統領の座を争っていることは皆さんもご存じかと思いますが、実際の選挙の流れや当選者が決まる仕組みについて詳しく知っているという方は少ないのではないでしょうか。そこで今回は、アメリカ大統領選挙の仕組みについてお伝えしたいと思います。

 

選挙の頻度:

アメリカ大統領の任期は4年のため、4年に一度、大統領選挙が行われます。今年はコロナ禍で東京オリンピックは延期となりましたが、通常は夏のオリンピックと同じ年にアメリカ大統領選挙が行われます。大統領は2期まで認められているため、現職の大統領が2期目に当選した場合、最大任期は8年間となります。

 

大統領に立候補できる人:

アメリカで生まれたアメリカ人であること、35歳以上であること、アメリカに14年以上居住していること、の3つの条件を満たせば、誰でも大統領選に立候補することができます。しかし、19世紀後半以降は共和党と民主党の二大政党制となっていることもあり、現実的に当選を目指すには、これらいずれかの政党に所属していることが条件といえるでしょう。

 

大統領選挙に投票できる人:

アメリカ国籍を持っていること、18歳以上であること、選挙が行われる州に居住していること、の3つの条件を満たせば、大統領選挙の一般有権者として登録をすることができます。投票するには登録をする必要があります。

 

大統領選挙の流れ:

2月~6月、予備選挙、党員集会: 各政党内での候補者を決める大統領選挙の予選となる。

8月、党大会: 正式に各党から一名ずつの候補者が最終指名され、文字通り、一騎打ちの選挙戦が始まる。

9月~10月、本選挙: 各候補者が選挙に向けて集会、TV出演、討論会など本格的なキャンペーン活動を行う。

11月、投票日: 11月最初の火曜日が一般有権者の投票日。期日前投票や、郵送での投票も可能。

 

当選者が決まる仕組み 選挙人制度:

一般有権者は、投票用紙に書かれた大統領候補者の名前にチェックを入れて投票します。全米でより多くの一般票を獲得した候補者が大統領になるのかというと、そうではありません。アメリカ大統領選挙は、合衆国憲法によりelectoral college(選挙人)制度で当選者を決めることが定められており、州ごとに割り当てられた選挙人の数を、どちらの候補者が多く獲得するかで勝敗が決まります。その州の上院議員、下院議員によって構成される選挙人の数は州の人口によって決められており、全米で538人います。そして特筆すべきは、ネブラスカ州とメイン州を除くすべての州が、“勝者総取り方式“を採用しているという点です。つまりは、その州で一般有権者から1票でも多くの票を集めた候補者が、その州の選挙人票をすべて獲得するということになります。一般有権者は直接、大統領候補者に投票をしているように見えますが、実は居住する州の選挙人票すべてをどちらの候補者に投票するかを決めているのです。

下記が現在のelectoral college mapです。

 

FCGアメリカニュースレター202010

例えば、カリフォルニア州でバイデン氏がトランプ大統領よりも1票でも多くの一般票を獲得した場合、カリフォルニア州の選挙人票55票はすべてバイデン氏が獲得することになります。逆に、テキサス州でトランプ大統領がバイデン氏より1票でも多くの一般票を獲得した場合は、テキサス州の選挙人票38票はすべてトランプ大統領が獲得します。このように、各州の選挙人票を取り合う形で争われ、最終的に全米の選挙人票538の過半数にあたる270以上の選挙人票を獲得した候補者が、当選となります。大統領選挙の予想や開票の際に、“〇〇州はどちらが強い、××州はどちらが取る”、といった表現が使われるのは、このためです。州によっては、毎回共和党が勝利する州、毎回民主党が勝利する州、というように傾向が決まっているところもありますが、逆に、選挙のたびに勝利する党が変わるような州は“激戦州”(Battleground State) または“揺れ動く州”(Swing State)と呼ばれており、これらの州の選挙人票をどちらが獲得できるかが当選への鍵となります。

2016年の大統領選挙で、民主党のヒラリー・クリントン氏が一般得票数の合計でトランプ氏を約300万票も上回っていたにもかかわらず落選したのは、いくつかの激戦州において僅差で負けたことにより、ことごとく選挙人票を落としたことが原因だったと言われています。

 

2020年一般投票の動向:

今年は、投票日のちょうど2週間前にあたる1020日の時点で、すでに4,000万人を超える一般有権者が期日前投票を済ませていると言われています。これは2016年の大統領選挙での全投票者数の約30%にあたり、まだ両候補者のキャンペーン活動が続いているにも関わらず、多くの人がすでに意思決定をし、投票まで済ませているということになります。新型コロナウィルスの感染拡大やそれに伴う経済の後退、そして人種差別に対する抗議活動などさまざまな問題が発生した今年は、より多くの人々が選挙に関心を持っており、投票する一般有権者の総数は前回よりはるかに多くなるであろうと言われています。加えて、コロナ禍で有権者が安全に投票できるよう、期日前投票を初めて導入した州や、期日前投票期間を大幅に拡大した州もあり、これらの措置が早めの投票活動につながっているとみられています。

ちなみに、もう一つの投票手段である郵送での投票については、偽物の投函箱が設置されたり、投函箱が何者かによって燃やされ投票用紙が焼失してしまったりという信じがたい事件も発生しており、本当に安全な投票方法といえるのか?という議論も起こる事態となっています。

10月に入ってからは、各社が行う世論調査を元に様々な予想が出てきていますが、上記で説明したとおり、一般有権者からの得票数と、選挙の結果が一致するとは限りません。選挙戦も佳境に入った今、両候補者は激戦州と呼ばれている州でより多くの支持を得るべく積極的にキャンペーン活動を行っており、これから113()の投票日までは引き続き激しい選挙戦が繰り広げられることは間違いありません。アメリカ大統領選挙の仕組みを理解した上で、残りの選挙戦の行方を見守っていくと、面白いかもしれません。

 

By 上野 裕美

Fair Consulting USA Inc.

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【PDF版】FCUS News letter vol. 18 Presidential Election