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FCG アメリカ ニュースレター 第19回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第3回

2020年11月10日アメリカ

第19回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第3

 

日本企業がアメリカでビジネスを行うにあたり、知っておくべき人事・労務に関するルールや慣習の解説第3回として、今回は従業員の分類”Exempt””Non-Exempt”の違いについてご説明します。

アメリカで、従業員の雇用形態は”Exempt”か“Non-Exempt” のいずれかのステータスに分けられます。“Exempt” は日本語に直訳すると「免除」となり、反対に” Non-Exempt” は「免除されていない」となります。いったい何の免除を指しているのか?というと、Fair Labor Standards Act (FLSA)= 連邦公正労働基準法で規定されている残業代の支払い義務のことになります。

FLSAでは、従業員が週に40時間を超えて働いた時間に対し、基本時給の1.5倍の残業代を支払うことを雇用主に義務付けています。Exemptの従業員に対しては、これが免除されている、つまり残業代を支払う必要が無くなるということになります。反対に、免除されていないNon-Exemptの従業員に対しては、週40時間を超えて働いた場合は残業代を支払わなければなりません。

この他、従業員が”Exempt”に分類されるか“Non-Exempt” に分類されるかによって、その権利に様々な違いがあります。今回は、Exempt従業員とNon-Exempt従業員の違いに焦点を当てて、解説したいと思います。

 

Exempt従業員に分類するための条件

FLSAでは、従業員がExemptのステータスとなるには、以下の条件を満たすことが必要と定められています。

・少なくとも年間35,568ドル(または週684ドル)の給与を得ていること。

・勤務した時間や業務内容に関わらず、決まった固定給を受け取っていること。

・役員、管理職、専門職など、特定の職務を執行する従業員であること。

Exempt従業員は、与えられた役割をこなす能力を買われており、時間を買われているわけではありません。そのため、出退勤を記録する必要もありません。例えば週に20時間しか働かなかった時でも、反対に週に50時間働いた時でも、決まった固定給を受け取ることになります。

ここで注意すべきは、Exemptの条件は州や自治体によって異なるため、上記のFLSAの条件のみで判断してはいけないという点です。例えばカリフォルニア州では現在、上記1.の条件が、従業員25名以下の会社は、「少なくとも年間49,920ドル(または週960ドル)の給与を得ていること」、従業員26名以上の会社は、「少なくとも年間54,080ドル(または週1,040 ドル)の給与を得ていること」となっています。これを満たさない従業員はすべてNon-Exemptとして扱わなければなりません。従業員を雇用する際は、州や自治体の法律を確認し、十分検討した上で従業員のステータスを決定することが重要です。

 

Non-Exempt従業員の権利

Exemptの条件に当てはまらない従業員は、すべてNon-Exempt従業員に分類されます。Non-Exempt従業員については、出退勤を日々記録し、勤務時間を管理する必要があります。Non-Exempt従業員には、以下の権利が保証されます。

・FLSAまたは州、自治体で定められた最低賃金を受け取る権利。

・FLSAまたは州、自治体で定められた残業代を受け取る権利。

ここでも、従うべき法律が州や自治体によって異なることに注意しなければなりません。例えば、FLSAで定められている連邦レベルでの最低時給は7.25ドルですが、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の最低時給は現在、従業員25名以下の会社の場合は14.25ドル、従業員26名以上の会社の場合は15ドルと決められています。景気や物価の変動により最低賃金が変わるため、その年の最低賃金を正しく把握しておく必要があります。

また、残業時間の計算方法も、州や自治体によって異なり、例えば、FLSAで定められている週40時間を超えた分だけではなく、1日8時間を超えた分や、7日間連続で出勤した場合の7日目の勤務時間が残業になるなど、複雑なルールが存在する州もあります。その他、Non-Exempt従業員への給与支給頻度や残業単価についても州や自治体によって異なります。

 

ExemptとNon-Exempt従業員の誤分類 “Misclassification” は法律違反であり、条件を満たしていない従業員を誤ってExemptとして扱ってしまった場合、後に未払いの残業代をめぐって訴訟となる事もあります。まずは雇用の際に正しく従業員を分類することが重要であり、その際は現地の労働法を正しく把握している専門家に相談し、アドバイスを求めるのが良いでしょう。また、Non-Exempt従業員に対し、適切な最低賃金や残業代の支払いがされなかった場合も法律違反となりますが、変動する最低賃金や、勤務地によって異なる残業計算方法をすべて正確に把握し、給与計算に反映させるのは大変な業務となる可能性があります。アメリカでは、人事管理と併せて、給与計算業務も外部の専門家にアウトソーシングしている会社が少なくありません。従業員を正しく分類し、正確に給与を計算し支払うために、外部の専門家のサービスを活用することも検討してみてはいかがでしょうか。

 

By 上野 裕美

Fair Consulting USA Inc.

Los Angeles Office

 

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◇涌井 正晴

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【PDF版】FCUS News letter vol. 19 Exempt Non-Exempt