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FCG アメリカ ニュースレター 第20回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第4回

Thursday November 26th, 2020USA

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第20回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第4回

 

第16回ニュースレターでご紹介したとおり、アメリカではAt-Willでの雇用が基本となるため転職率が高く、優秀な人材を繋ぎとめておくには、従業員のリテンション・マネジメント(人材を長期にわたり確保するための人事管理)が重要となります。法律で加入が義務付けられている労災保険や失業保険などの他、魅力的な福利厚生を提供することは、リテンション・マネジメントの1つとして効果的であり、多くの企業が福利厚生の充実に力を入れています。また、世の中の動向に合わせて定期的に福利厚生を見直すことも大切です。今回は、アメリカで一般的な福利厚生の内容と、今後需要が高まるであろう福利厚生についてお伝えします。

 

代表的な福利厚生

1.健康保険 

アメリカは日本のように国民皆保険制度が無く、医療費が非常に高額であることから、多くの会社が健康保険を福利厚生として提供しています。会社が保険料の全額または一部を負担する場合が多く、個人で保険に加入するより自己負担額が少なくてすむ上、保険の内容も優れているため、従業員にとっては非常に魅力的な福利厚生であるといえます。アメリカでは医療保険と歯科保険、眼科保険は分かれており、ほとんどの会社がすべての保険を提供しています。従業員の扶養家族も保険の対象に含めている会社が多いですが、会社の保険料負担割合は様々で、本人以外の保険料は負担しない会社もあります。

2. 有給休暇・病欠休暇

一般的な休暇制度として、Vacation(有給休暇)、Sick Leave(病気休暇)と目的別に分けて従業員に付与することが多いですが、その二つを合わせてPaid Time OffPTOと呼称して従業員に付与している会社もあります。勤続年数に応じて付与する有給休暇日数を増やすことも、リテンション・マネジメントにおいて有効です。カリフォルニア州やニューヨーク市など一部の地域では、一定日数の病気休暇をパートタイム社員も含む全従業員に付与することが法律で義務付けられているため注意する必要があります。

3. 年金制度(401K

アメリカでは公的年金を補うものとして、確定拠出型の個人年金に加入することが一般的です。401Kはアメリカの企業に勤めている人が加入できるプランで、拠出金が給与から天引きされることで課税対象の給与額が減り、従業員は節税対策になります。従業員の拠出額に会社がMatch Up(積み増し)することで、福利厚生として魅力的な制度となります。会社によってMatch Upのルールは違いますが、中小企業向けの401KプランプロバイダーであるHuman Interest社の2020年の調査によると、従業員の給与の4.7%が、会社がMatch Upする上限の平均値となっています。

 

以上の3つは多くの会社が導入している福利厚生の例ですが、その他に下記のような福利厚生もあります。

・社用車、パソコン、携帯電話の貸し出し

・自社商品やサービスに対する社員割引

・自社株の購入権利

・奨学金の返済援助

・スポーツジムの会費補助

日本ではよく見受けられる住宅・家賃手当や交通費の支給などは、アメリカではあまり一般的ではありません。

 

今後の福利厚生のトレンド

1.テレドクター、オンライン診療

健康保険会社や医療ネットワークの多くが、病院に行かずとも電話やインターネットを利用して医者の診察が受けられるテレドクター、オンライン診療を提供し始めています。今後も自宅にいながら医師への相談ができるテレドクター、オンライン診療の需要は伸び続けることが予想され、多くの雇用主が、軽度の病気や緊急性のない治療に対して、遠隔医療サービスを受けることができる選択肢を提供しています。

2. メンタルヘルスケア

2020年は多くの人にとって不安やストレスの多い年でした。多くの雇用主が従業員のメンタルヘルスケアの必要性が高まっていることを認識しており、より良いメンタルヘルスケアを組み込んだ健康保険を導入しています。雇用主向けに適切な健康保険プランを提案している非営利団体、Business Group on Healthのアンケート調査に回答した雇用主のうち69%以上が、精神科医によるオンラインカウンセリングへのアクセスを提供していると述べています。

3. 経済セミナーやカウンセリングの提供

貯蓄がない、または非常に少なく、もらった給料はすぐにすべて使い切る“Paycheck to Paycheck”の生活をしているアメリカ人が約80%に上ると言われている中、今回のパンデミックでは本人や家族の収入減少により多くの人が経済的な打撃を受け、また精神的ストレスにもつながっています。多くの雇用主が福利厚生の一環として、従業員が金融知識を学べるセミナーや、ファイナンシャルプランナーへの相談窓口を提供することを検討しています。

 

上記の他、大手求人サイトGlassdoorのアンケート調査によると、回答者の60%以上がCOVID-19による制限が完全に解除された後も在宅勤務を続けたいと考えており、新しい仕事を探す際には完全在宅勤務の職種を探して応募するであろうとの回答もあることから、時間差出勤や曜日差出勤などを含めた柔軟な勤務体制の設計も従業員にとって魅力的な制度といえるでしょう。

 

充実した福利厚生を提供することは、従業員の会社への満足度や忠誠心を高めるなど、より良い職場環境づくりに役立ちます。また、求職者は仕事探しの際、給与と同等に福利厚生を重視するといわれており、優秀な人材を集めることにも役立ちます。現地の労務・人事の事情に精通した専門家に相談するなどして、従業員と雇用主の双方にとって有意義な福利厚生となっているかどうか、現在の環境に照らして適切な福利厚生となっているかどうか、一度再確認してみてはいかがでしょうか。

 

By 上野 裕美

Fair Consulting USA Inc.

Los Angeles Office

 

お問い合わせ

Fair Consulting USA Inc.

21250 Hawthorne Blvd, Suite 500, Unit #48, Torrance, CA 90503

Tel: +1-310-792-7059

◇涌井 正晴

Email: ma.wakui@faircongrp.com

 


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