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FCG アメリカ ニュースレター 第23回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第6回

Monday January 25th, 2021USA

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第23回:知っておくべきアメリカの人事・労務 第6回   

Onboarding Checklist 入社手続きチェックリスト

 

アメリカの人事・労務シリーズ第6回となる今回のニュースレターでは、新入社員採用後の入社手続きについてお伝えします。アメリカの人事用語として“Onboarding”(オンボーディング)という言葉が頻繁に使われます。これは、飛行機などの乗り物に搭乗するという意味の”Boarding”(ボーディング)という英単語から派生した用語で、新入社員を会社組織に迎え入れる一連の流れのことを指します。転職率が高く社員の入れ替わりが頻繁に起こるアメリカでは、入社手続きの際の手順や、必要書類などをチェックリスト化し準備しておくことが非常に有効です。オンボーディングチェックリストには、貸与品の受け渡しやオフィス内の案内など基本的な事項から、法的に義務付けられている書類の受け渡し、今後のトレーニングの説明といったところまで、すべてのステップを項目化し記載します。このようにあらかじめ用意したオンボーディングチェックリストを使用することで、重要な手順を見落とすことなくスムーズに新しい従業員を迎え入れることができます。今回は、オンボーディングチェックリストを作成するにあたり欠かせない、いくつかの項目をご紹介します。

 

Form I-9

採用した従業員が、アメリカ国内で合法的に働ける被雇用者であることを証明するために、従業員と雇用主の双方がForm I-9に記入する必要があります。まず従業員は、入社当日にFormI-9のセクション1に自身の名前、住所、社会保障番号などの基本情報を記入したうえで、身分証明書と共に雇用主に提出します。受け入れ可能な身分証明書の一覧はForm I-9の最終頁に記載されており、パスポート、グリーンカード、ビザの写真入りのページ、労働許可証などのうち一つまたは複数を提出する必要があります。その後雇用主は、提出された身分証明書が受け入れ可能なものであるか、そして正しい情報が記載されているかどうかを確認し、Form I-9のセクション2にその内容を記録し、署名します。雇用主は、完成したForm I-9を従業員の入社日から3年または退職日から1年のどちらか遅いほうの日まで保管しておくことが義務付けられています。雇用主がForm I-9の記入や保管を適切に行わなかったり、労働局や移民局から監査が入った際にForm I-9の開示ができなかった場合、違法とみなされ罰金や刑事罰が課される可能性があるため注意が必要です。

 

Form W-4

Form W-4はアメリカ内国歳入庁指定の従業員源泉徴収票です。従業員が、扶養家族の情報、他の収入源の情報、婚姻のステータスなどを記入し、雇用主が毎回の給与から源泉徴収される所得税の額を計算します。従業員は入社日にForm W-4を提出しますが、自身の扶養家族が増えたり、婚姻のステータスが変わったりした場合は、その都度新しいForm W-4を雇用主に提出することができます。雇用主は、Form W-4を他の雇用税関連の書類と同様、少なくとも4年間保管する必要があります。

 

州や自治体の源泉徴収票・雇用通知書

2011年オバマ政権下で発効した法律により、すべての州において、新規採用もしくは再雇用した従業員に関する情報を届け出ることが義務付けられました。州によって使用するフォームや提出先は異なりますが、定められた期限内に提出しなかった場合はペナルティが課されることもあるため注意する必要があります。

また州によっては、Form W-4と同じような役割を持つ源泉徴収票の提出が義務付けられていることがあります。カリフォルニア州では、州の個人所得税に対する独自の源泉徴収票“Form DE-4”を、Form W-4とは別に提出することが202011日より義務付けられました。従業員を雇用している州のルールを確認し、必要な書類をあらかじめ準備しておく必要があります。

 

給料振込先・タイムカードの設定

アメリカでは日常生活の多くの場面で小切手を使う機会がありますが、振込先口座を確認するためにも“Void Check”(無効化した小切手)がよく使われます。従業員が自身の個人口座の小切手にVoidと記載したものを提出することで、それを受け取った雇用主は小切手に印刷されている氏名、銀行コード及び口座番号を見て正確に給与振込先の登録をすることができます。

採用した従業員がNon-Exemptの場合は勤怠管理をすることが法的に義務付けられているため、初日からタイムカードを使用します。最近ではオンラインで打刻ができるサービスもたくさんありますが、どのような形態を使用するにしても、スムーズに勤怠管理が開始できるようあらかじめ設定を行っておくと良いでしょう。

 

従業員ハンドブック

入社時オリエンテーションを行い、会社の従業員ハンドブックを渡し、説明します。従業員ハンドブックには福利厚生のほか、会社の規則や、罰則または解雇となるルールも記載されており、それらを理解し承諾したという意味で必ず最後に従業員の署名をもらうようにします。また社内で決められた秘密保持契約書などがある場合も、署名をもらっておくようにします。雇用関連の訴訟が多いアメリカでは、万が一問題が発生した時にこれらを証拠として使用できる可能性があります。また従業員ハンドブックは、社内のルールや法律の変更があるたび適宜改定することが重要です。従業員ハンドブックを改定した際は、既存の社員も含め全員に周知しましょう。

 

アメリカでは従業員の約50%が入社から18か月以内に退職すると言われていますが、アメリカの調査会社Gallup社の集計によると、適切なオンボーディングを経験した従業員は、3年以上その会社に勤続する可能性が58%も高くなるということです。明確かつスムーズな手順を確立することによる雇用者の従業員管理意識の高さが、従業員満足度に反映されているということでしょう。しかし、オンボーディングチェックリストに含めるべき項目は、会社の所在地、業種、社内ルールなどによって異なり、法律の変更や複数州で事業を実施している場合などには、その作成作業は複雑になりかねません。オンボーディングチェックリストの作成または見直しの際には、現地の労務・人事の専門家に相談し、アドバイスを得ることも有用でしょう。

 

By 上野 裕美

Fair Consulting USA Inc.

Los Angeles Office

 

お問い合わせ

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Tel: +1-310-792-7059

◇涌井 正晴

Email: ma.wakui@faircongrp.com

 


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【PDF版】FCUS News letter vol. 23 Onboarding Checklist