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FCG アメリカ ニュースレター 第26回:バイデン政権発足後の動向

2021年03月08日アメリカ

26回:バイデン政権発足後の動向

 

バイデン大統領が就任してから早くも1か月以上が経過しました。COVID-19、人種差別問題、選挙による国民の分断など数々の問題を抱える中就任したバイデン大統領は、120日の就任式典を終えたその日のうちに早速オーバルオフィス(大統領執務室)に入り、17の大統領令に署名したことが話題になりました。その後も約1か月余りの間に、前トランプ政権の政策の撤回を含む50以上もの大統領令、覚書、布告等に署名しています。今回はその中から項目別に主要な政策を紹介し、バイデン政権の動向をお伝えします。

 

移民政策

・イスラム教徒が多数を占める7か国からの入国を禁止するトランプ政権による制限を撤回。

・メキシコとの国境に壁を建設するための資金提供を目的とするトランプ政権による国家緊急宣言を終了することにより、実質的に壁の建設を中止。

・米国に不法入国した子供に対する手当て・保護を強化。

COVID-19パンデミック中、グリーンカードの発行を一時停止し、合法的な移民も制限したトランプ政権による政策を撤回。

 

医療・福祉

2010年オバマ政権下で制定された医療改革制度the Affordable Care ActACA) と低所得者向け医療保険Medicaidを再び強化し、国民に対し健康保険への加入を推奨。また、内容の悪い健康保険プランの見直し、廃止を指示。

・人口妊娠中絶を行う団体への資金提供を禁止したトランプ政権の政策を撤回。

 

COVID-19

・特定の地域(英国、アイルランド、南アフリカ、シェンゲン圏)から米国への渡航制限を復活。

・世界保健機関(WHO)からの米国の脱退を撤回し、アンソニー・ファウチ氏を代表として再加入する。

・国際的なパンデミック対策を支援するための組織を政府内で再編し、米国のリーダーシップ回復を促進。

・「100日間マスク着用チャレンジ」として、連邦政府の建物内でのマスク着用とソーシャル・ディスタンスを義務付け。州と地方自治体にも同じことを行うよう推奨。

COVID-19対策のため州兵を動員する際の各州に対する補償や支援を強化。

COVID-19や今後発生し得る公衆衛生上の危機に際し、データや科学的根拠に基づいた対応策を取ることを約束。

・米国内のCOVID-19検査数を拡大するための委員会を設立。

・米国内のワクチン、検査、個人用保護具の生産、供給の加速を指示。

・学校、保育施設、および高等教育機関を安全に再開し運営するためのガイダンスの提供を指示。

・空港や、公共交通機関でのマスク着用を義務付け。海外からの渡航者に対し、入国時COVID-19の陰性証明の提出を義務付け。

・労働者の健康と安全を守るため、労働安全衛生局(OSHA)に対し、COVID-19に関する明確なガイダンスを発表すること、および既存のガイドラインを修正し緊急暫定基準を制定すべきかどうかの決定を指示。

 

経済

・米国産の材料と米国内で製造された商品を優遇することを目的とした、バイアメリカン政策の強化を宣言。

・家賃の滞納による立ち退きと差し押さえに関するモラトリアムを331日まで延長。

・学生ローンを抱える米国人のローンと利息の支払いの一時停止策を930日まで延長。

 

差別撤廃・多様性の尊重

・トランスジェンダーは米軍に入隊できないとしたトランプ政権の大統領令を撤回。

・職場における性同一性または性的指向に基づく差別を撲滅することを指示。

・連邦政府内において人種的公平性を保つことを宣言。

・過去1年間にアジア系米国人に対する差別が高まったことを非難。保健福祉省と法務省に対し、COVID-19に関連するヘイトクライムや差別を防ぐためのガイダンス発行の検討とアジア系米国人コミュニティとの連携を指示。

・住宅都市開発省に対し、トランプ政権による住宅売買や都市開発に関する規制を再度見直し、差別のない公正住宅法を遵守することを指示。

 

環境問題

・地球温暖化防止を目的として2015年に署名されたパリ国際協定へ復帰。

・カナダの油田と米国メキシコ湾岸の製油所を結ぶパイプライン「キーストーンXL」の建設許可を取り消す。その他100を超える環境に対するトランプ政権による政策の再検討および取り消しを各機関に指示。

・政府への信頼回復のため、連邦機関全般の科学的根拠を確証する責任を、科学技術政策局の局長に委ねることを宣言。

・米国の外交政策と国家安全保障の中に含まれる気候変動対策を強化。

 

バイデン大統領は、異例ともいえるペースで各種政策を次々に打ち出しています。これらを法案として通すためには議会の承認を得る必要がありますが、下院、上院とも民主党が過半数を占めていることを考えると、法律化は実現しやすい状況にあるといえます。さらに今後も、税制の改革やインフラの再建など、米国でビジネスを行う日本企業にも大きく影響する様々な政策が出されることが予想され、新政権の動向を注意深く見守っていくことが重要です。

 

By 上野 裕美 

Fair Consulting USA Inc. 

Los Angeles Office

 

お問い合わせ

Fair Consulting USA Inc.

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◇涌井 正晴

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【PDF版】FCUS News letter vol. 26 Biden’s Executive Orders