FCGグループのニュースレターをお届けします。
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2022年05月06日アメリカ
第38回:アメリカの労働者不足問題
Worker Shortage in U.S.
アメリカでは現在、深刻な労働者不足が問題となっています。米国労働統計局(BLS)の2022年3月時点の調査によると、失業者の数が630万人であるのに対し求人の数は1,150万件でした。失業者の数より520万も多くの求人が出ており、多くの雇用主が人手不足に頭を悩ませていることがわかります。
このような状況が発生している背景として、 “The Great Resignation”(大退職時代)と呼ばれる、多くのアメリカ人が自主的に仕事を辞める動きが続いていることが挙げられます。また40年に一度の急激な物価上昇に伴い賃金上昇に拍車がかかっていることで、雇用主の採用及び雇用維持のハードルがさらに上がっています。
“The Great Resignation”(大退職時代)
2020年3月ごろから新型コロナウイルスの感染拡大により各地で経済活動が制限されたことにより、多くの雇用主が従業員の解雇を余儀なくされました。そしてThe Great Resignationは、ワクチンの普及が始まって経済活動への制限が緩み始めた2021年の初めから始まり、現在まで続いています。労働省が退職率を測定し始めた2000年12月から2021年2月までの間、1か月あたりの退職率が2.4%を超えることはありませんでしたが、その後上昇し続け、2021年11月には過去最高の3.0%を記録し、2022年2月時点でも2.9%と引き続き高い数値を記録しています。また給与データおよびソフトウェア会社PayScaleが2021年11月から2022年1月にかけて行った調査によると、アンケートに回答した雇用主のうち76%が労働者不足または採用活動における困難を経験していると回答し、49%が自発的な退職が前年に比べ増加したと回答しました。
The Great Resignationは、パンデミックにより自分のキャリア、労働条件、人生においての優先順位、長期的な目標などを考え直した結果、新しい仕事や、より自分に合うライフスタイルを求めていることが原因である言われています。例えば、ロックダウンにより在宅勤務を経験した従業員は、その自由度の高さ、柔軟性、ワークライフバランスのとりやすさに気づきました。そのため、雇用主が新型コロナウイルスの感染収束にともないオフィスを再開し、従業員へ出社を求めたタイミングで退職してしまうというケースも多くみられます。また、飲食、小売、ホテル、物流などのいわゆるエッセンシャルビジネスと呼ばれる業界では、従業員が肉体的にも楽でスケジュールが安定しているオフィスワークへ転職したりするケースがあり、深刻な労働者不足が問題となっています。
物価と賃金の上昇
米国労働統計局(BLS)の発表によると、2022年3月の消費者物価指数は前年比で8.5%上昇し、1981年以来最高の上昇率となりました。項目ごとの上昇率ではガソリン、家賃、食品が最も高い上昇率を記録しています。これに比例し人材市場においても賃金の上昇が発生しており、同BLSの発表によると、2022年3月の平均週給は前年比で5.6%上昇しました。
しかしながら、従業員はそれ以上の昇給を期待しています。監査、税務コンサルティング会社Grant Thornton LLPが今年初めに5,000人の労働者に対して行った調査によると、アンケートに回答した人のうち40%が今年度6%以上の昇給率を期待していると回答し、21%が10%以上の昇給率を期待していると回答しました。また、直近で新しい仕事に転職した人のうちの40%が、前職より10%以上高い賃金がもらえる仕事に転職したと答え、13%が、前職より20%以上高い賃金がもらえる仕事に転職したと答えました。人材確保における競争が激しくなっている中、アマゾンでは年俸の上限を今までの16万ドルから35万ドルへと大幅に引き上げたことを発表しました。ウォルマートでは、トラック運転手不足のため、新人のトラック運転手に11万ドルの年俸を支払うと発表しました。前述のPayScale社による調査でアンケートに回答した雇用主のうち85%が、予定している2022年度の昇給では不十分ではないかと懸念していると答えています。
大退職時代と賃金の上昇という2つの状況が合わさって、今いる人材を繋ぎとめること、そして新しい人材を確保することが大変困難な状況になっています。大幅に人件費を増額することが難しい中小企業においては、従業員を雇用する代わりにアウトソーシングを活用することもひとつの手段です。採用活動にかかるコストや人件費を削減できることに加え、従業員の退職に左右されない安定した組織体制を構築できるというメリットがあります。かつてない深刻な労働者不足の中、必ず従業員が行わなければならない業務と、外部にアウトソーシングできる業務を分けることで、限られたリソースを効率よく使う工夫をすることが大切であるといえるでしょう。
By 上野 裕美
Fair Consulting USA Inc.
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