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第59回目  日印社会保障協定発効にむけて

2016年11月01日インド

デリー日本国大使館で開催された日印社会保障協定説明会において、厚生労働省及び日本年金機構担当官の方がご説明された内容をこちらにまとめたいと思います。

社会保障協定のねらいとは国際間の人的移動の活発化に伴う年金等における課題の解決であり、二重負担の解消及び年金受給資格期間の通算の確保を担保するものである。2016 年 10 月 1 日より協定は発効となるが、発効前は日本国で強制加入となる厚生年金保険料とインドでの年金保険料の両方を支払う必要がある。さらにインド就労期間が10 年に満たない方はインド年金の最低加入期間 10 年の期間を満たさないためインド年金は不支給となっていた。
2016 年 10 月 1 日以降は原則として 5 年以内のインドへの短期派遣の場合は日本国の制度のみに加入で足りインド共和国での加入義務は免除される。またインド駐在期間が 10 年未満である場合であっても、日本国での就労期間を加味されるため年金受給資格を満たすことが可能となった(支給額は納付年数分)。さらに日本国へ帰任後に必要なインド年金当局への申請は日本国で行えることとなる。

本協定における留意点としては以下の項目が考えられる。
◆日印社会保障協定の対象者はあくまでも被用者のみとなる。よって、インドで自営業を行っている方は対象外となる。また日本国で加入している年金等は強制される厚生年金保険等であって、任意で加入している国民年金等は対象外となる。その結果、インド共和国で現地採用となっている方の多くは日本国で強制加入している年金等はなく、加入している場合も任意での国民年金等となり本協定の対象外であるため、従来加入しているインド共和国での年金制度に加入し続ける義務がある。2016 年 10 月 1 日以降にインド共和国で現地採用される方も、
当該インドの会社が EPF 制度に加入義務がある会社である場合は本協定でご本人が免除されないため EPF に加入する義務がある。
◆短期派遣が原則であるため本協定の対象者は 5 年間での駐在期間が設定されているが、個別に両国間で協し、合意した場合は 3 年を超えない期間延長が可能である。さらに合計 8 年を超える場合であってもインド共和国の EPS 制度(被用者年金制度)に加入できない場合は日本国の制度に継続して加入することが可能である。
◆ 2016 年 10 月 1 日以前にインド共和国制度に加入している日本人駐在員の方の 5 年間の算定方法であるが、原則として全ての方が2016 年 10 月 1 日から 5 年間をカウントする。
◆インド共和国において本協定のメリットを享受するには「適用証明書」の発行を受ける必要がある。適用証明書は本人・日本本社が日本国年金事務所に適用証明書交付申請書を提出する必要があり、提出後 2 週間ほどで発行される見込みである。発行された適用証明書は必ず原本を本人若しくはインド子会社等で保管し、EPFO(被用者積立基金貴行)の監査等において求められた際に原本を提示する必要がある。本協定が発効後も自動的にインド共和国での加入義務免除を証明されるものでなく、また、何かしらの免除である旨の届け出制度があるわけではないため、本人・インド子会社等において当該日本人駐在員が本協定の対象者であるためインド共和国での年金等制度の加入免除者である旨を証明する義務がある。
◆ 5 年以上の期間延長が承認された日本人駐在員は「適用証明期間継続・延長申請書」を年金事務所に提出し新たな適用証明書を入手する必要がある。
◆既にインド共和国で加入済みの日本人駐在員はインドの Websiteから脱退手続きを行う必要があり、その際に EPFO から求められた場合、適用証明書を提示する義務がある。
◆すでに納付済みである EPF に関しては 2016 年 10 月 1 日以降において脱退手続き後に引き出すことが可能となる。しかしながらEPS に関しては 58 歳以上での支給等となるため 2016 年 10 月 1 日以降であっても、直ぐに支給されるものではなく各々の日本人駐在員の条件に依ることとなる。
◆日本年金機構においてインド共和国の EPS 及び EPF の年金に関する申請が可能となる。年金事務所等に提出されたインド年金等の申請書は EPFO 等のインドの実施機関に日本年金機構本部から送付・報告されるが、インド年金の裁定結果・質問は申請者へ直接通知されるので留意が必要となる。さらに、当該申請書には原則として 1ルピー印紙添付が必要となるため、事前にインド共和国で入手しておく必要がある。上記に加えてインド子会社等での雇用主による記載内容の証明が必要となる点も留意が必要となる。従来最も議論となっていた EPF の引き出し・EPS の給付方法であるが、インド共和国のみならず日本国の日本人駐在員個人名義の銀行口座へ入金が行われることとなり、インド子会社・日本本社名義の銀行口座への入金は行えない。SelfCheque での入手も行えないとのことであった。その結果、インド子会社・日本本社で EPF・EPS 掛け金を納付していた会社様がどのように当該給付金を会社として取り戻すかは頭が痛い論点として残っている状態となっている。