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第62回 インド労働法のポイント①

2017年03月01日インド

本紙面を借りながら、雇用契約書・就業規則の作成や解雇といった、インドにおいて日系企業が直面しがちな労働に関する法律問題について解説していきますが、まず本稿では、労働問題を考えるにあたって重要な概念である「workman」の概念について解説します。
 workman は、 問 題 と な っ て い る 労 働 者がインド労働法の保護を受けるか否か検討する際の判断基準となる概念です。インドの労働法は、日本の労働法と同様、一般的に 労 働 者 に 手 厚 い も の と な っ て い ま す が、そ の 手 厚 い 保 護 は workman に 該 当 す る 労働 者 に つ い て の み 及 び ま す。 し た が っ て、workman に該当する労働者の問題に関しては、インド労働法の規制に配慮しつつ対処する必要があります。他方で、workman に該 当 し な い 労 働 者 (non-workman) の 問 題は、原則として使用者・労働者が締結した雇用契約によってのみ規律されるため、一部例外を除いてインド労働法を考慮する必要はありません。
  で は、 ど の よ う な 労 働 者 が workman に該 当 す る の で し ょ う か。 産 業 紛 争 法 (The Industrial Dispute Act, 1947) の規定や判例によれば、通常企業との関係では、 (i) 管理・経営的立場にあるもの、(ii) 監督的役割を果たし、かつ、月 10,000 ルピーを超える給与を受領しているもの、(iii) 専門職的立場にあるものを除き、労働者は幅広く workmanに該当すると規定・解釈されています。

 例 え ば 管 理・ 経 営 的 立 場 の 例 と し て は、日 本 で い う 管 理 職 が 挙 げ ら れ、 自 ら の 裁 量で 他 者 に 指 示 を 出 す 労 働 者 に 認 定 さ れ る 傾向 が あ り ま す。 ま た、 監 督 的 役 割 の 例 と して は、 工 場 の ラ イ ン 長 の よ う に、 他 者 に 指示 を 出 し な が ら チ ー ム の 監 督 を し て い る 労働者に認定される傾向があります。ただし、具 体 的 に ど の よ う な 場 合 に 管 理・ 経 営 的 立場 が 認 め ら れ、 何 が 監 督 的 役 割 に 該 当 す るかは必ずしも一義的に明確ではありません。事後的に司法機関から workman に該当すると判断される可能性を考え、workman 該当性 が 不 明 確 な ケ ー ス に つ い て は 当 該 労 働 者を workman に該当するものとして取り扱いながら問題に対処することが推奨されます。