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第63回 インド労働法のポイント②<雇用契約書と就業規則との関係>

2017年03月01日インド

前稿では、インドにおける労働法規制の適 用 範 囲 を 考 え る 上 で 重 要 な workman の概念について解説しましたが、本稿では雇用契約書と就業規則との関係の日印間の差異について解説します。
 日本では、雇用契約書と就業規則は、労使間の法律関係を規律する最も基本的かつ重要な文書です。インドでも、両文書が重要な点に変わりはありませんが、就業規則の作成が義務付けられる事業所の範囲に大きな差異があるため、日本とは異なる配慮が必要とされます。
  す な わ ち、 日 本 で は 常 時 10 名 以 上 労 働者が雇用される場合には就業規則作成義務が課されるため、大半の企業は就業規則を作成する必要があり、このような就業規則には当然に法的拘束力が発生します。これに対して、インドでは、産業雇用 ( 就業規則 ) 法 (Industrial Employment(Standing Orders) Act, 1946 ) 上、100 名以上の労働者が工場等で雇用される場合についてのみ就 業 規 則 (Standing Orders) の 作 成 義 務 が課されるものとされており、就業規則の作成が法的に要求されるケースはむしろ例外的と言えます。そして、就業規則作成義務が課される場合には、就業規則は法的拘束力を有しますが、そうでない場合には、就業 規 則 は 当 然 に 法 的 拘 束 力 を 有 し ま せ ん。なお、法律上作成が義務付けられていない就業規則については、Employee Handbook
や Employment Policy 等の呼称が用いられます。
  こ の よ う に、 イ ン ド で は 就 業 規 則 作 成 義務 が 課 さ れ る 事 業 所 の 範 囲 が 限 定 的 で あ る結 果、 就 業 規 則 は 必 ず し も 法 的 拘 束 力 を 持つ 文 書 に 該 当 し ま せ ん。 そ の た め、 就 業 規則 の 作 成 が 法 律 上 義 務 付 け ら れ な い 会 社 につ い て は、 就 業 規 則 に 法 的 拘 束 力 を 持 た せる べ き か 否 か、 ど の よ う な 条 項 を 雇 用 契 約書 又 は 就 業 規 則 に 盛 り 込 む か と い っ た 事 項が イ ン ド 特 有 の 検 討 事 項 と な り ま す。 例 えば、就業規則に法的拘束力を持たせた場合、そ の 記 載 内 容 の 遵 守 を 労 働 者 に 強 い る こ とが 可 能 と な る 一 方 で、 使 用 者 も 就 業 規 則 記載 事 項 に 拘 束 さ れ。 使 用 者 側 の 義 務 も 増 える点には留意する必要があります。