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【第66回】雇用契約書作成上の留意点②(就業場所及び転勤)

2018年02月15日インド

本稿では、雇用契約書における就業場所及び転勤に関する条項について解説します。雇用契約書に記載されるべき給与に関する条項例として、例えば、以下のものが考えられます。

 

Place of Work and Transfer

Your place of posting/work will, at present, be [Gurgaon, Haryana]. During the employment with the Company, you shall be liable to be transferred to another branch, shift, post, anywhere in India or abroad and/or from one department to another or from one establishment to another and/or to any other business, whether existing or newly created, in which the Company may be having any interest, at the sole discretion of the Company.

 

雇用契約書を作成するにあたっては、就業場所に関して規定することが一般的です。日本でも同様のことが言えますが、どの場所で就業するかという点は労働者にとってとても重要です。特に、インド人はプライベートや家族親族との繋がりを大事にしますので、これに影響を与える就業場所については雇用契約書に明記することが重要です。

また、インドでは、雇用条件の一つとして転勤に関する規定を挿入することが重要です。2003Ranjit Chaudhury vs. India Tourism Development Corporation Ltd判決によれば、労働者の同意なくして実施された転勤は、雇用条件として転勤について記載がない場合無効とされると判示されています。そのため、インドでは転勤の規定がない場合は、労働者の同意を得ない限り、労働者を転勤させることはできないものとされています。会社設立当初は、インドにおける拠点も一つであることが通常であり、なかなか転勤に関する事項にまで頭が回りません。しかし、将来の会社事業の拡大によって、事業所を移転させ又は複数の事業拠点を立ち上げ、これに伴って労働者を転勤させる必要性が発生する可能性は多分にあります。このような事態に備え、設立したばかりの会社であっても、雇用契約書において転勤に関する条項を規定することが必要と言えます。なお、インドに複数の拠点を持つ会社によっては、インド人が親族と離れることを嫌う点に着目して、辞めさせたい労働者に転勤を命じることで辞職を促すことがあるそうです。その実効性等はさておき、転勤によって辞職を促すという手段を取る場合にも、転勤に関する条項が必要となります。