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【第77回】雇用契約解消の種類

2018年05月30日インド

前稿では、インドにおける解雇一般に関する留意点について解説しましたが、本稿では、インドにおいて労働者との雇用契約を解消するためにどのような手法があるか、その雇用契約の解消方法について解説します。

 インドにおける雇用契約解消のための手法は、 大きく分けて、(1)辞職(Resignation)、(2) 懲戒解雇(Dismissal/Discharge)および(3)普通解雇(Retrenchment)に分類されます。それぞれの意味するところは以下の通りになります(なお、厳密な法的な定義ではなく理解促進のためのものとご理解ください)。

(1)辞職:労働者が自ら退職届を提出して会社を辞める場など従業員の自らの意思表示に基づき雇用契約を終了させる場合

(2)懲戒解雇:会社就業規則などが定める規律・ ルールに違反したことを理由に使用者の意思表示により雇用関係を終了させる場合

(3)普通解雇:懲戒解雇に該当しない解雇であり、通常は会社都合の理由により使用者の意思表示により雇用関係を終了させる場合

 インドでは、労働者の性質(WorkmanかNonWorkmanか)、就業場所の性質(就業場所がオフィスなのかそれとも工場なのか)、就業している州がどこなのかといった様々な要素によって 具体的な手続きの内容が変わることは前稿で言及しましたが、これらの要素にかかわらず、雇用契約を解消させる手段が通常は(1)辞職、(2) 懲戒解雇および(3)普通解雇の3つのうちいずれかになるため、それぞれの手段の特徴を理解することが重要になります。

 まず、一般論として、雇用契約の解消のし易さ(後に紛争になる可能性が低く、仮に紛争になったとしても使用者に有利)に順位をつけるとすると、以下のとおりとなります。

 辞職 > 普通解雇> 懲戒解雇  

辞職は、通常労働者が自らの意思に基づいてその雇用関係を解消するものであり、また、法律上特別な様式や要件が求められるわけでないため、(1)~(3)の中で一番雇用契約の解消が容易 です。そのため、ある労働者との雇用契約の解消を考えるに当たっては、まず辞職の方法によることができないか検討すべきです。

 辞職の方法が難しい場合、普通解雇と懲戒解雇の方法によって解雇できないか検討する必要があります。普通解雇と懲戒解雇の分水嶺は解雇の原因が規律違反か否かという点にあります が、裁判での立証の負担や要求される手続きの煩雑さの観点から普通解雇の方が容易なケースが多いと言えます。

もし可能であれば普通解雇の方法による解決を図り、これも難しい場合には懲戒解雇の手段を検討するという流れが推奨されます。