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Tuesday May 15th, 2018India
前稿では、就業規則中の、競業避止条項 (Non-Compete Clause) といった制限条項 (Restrictive Covenants)に関して解説しました が、本稿からはインドにおける解雇・自主退職 の一般的な注意点について解説します。
インドで労務問題に頭を悩ませる日系企業も 多いかと思われますが、数ある労務問題の中でも最も悩ましい問題の一つが、解雇にまつわる問題です。
そもそも解雇や自主退職が問題になるケース では、使用者と労働者の間に認識の齟齬や紛争の火種があることが一般的ですが、何かとあれ ば訴訟を提起するインド人の気質も相まって、日本人からすると紛争に発展することはもちろん、訴訟沙汰になることなど想像もできないケー スにおいて、インド人労働者が労働審判所に訴 訟を提起することも稀ではありません。例えば、 使用者側が多めの退職金を提示して自主退職を打診し、話し合いの場では笑顔でお礼を言いな がらインド人労働者がこれに応じて退職届にサインしたにも関わらず、インド人労働者が後日 突然裁判を訴えてくるといった相談をよく受けます。日本人にとっては問題の少ないように思 われる事例であっても、裁判に発展するケースは往往にしてあるため、解雇や自主退職の問題 を扱うにあたっては、インド人の考え方・気質や習慣等を考慮した上で細心の注意を払ってことに臨む必要があります。
また、解雇や自主退職を行うにあたっては、法的・実務的にどのような手続きを経る必要があるか理解することが重要ですが、インドの解雇法制度が非常に複雑なことも、解雇にまつわ る問題を悩ましいものにする大きな一因となっています。解雇を適法に行うためには、契約書 に規定されている事項と法律に規定されている 事項を遵守する必要があります。しかし、解雇 といってもインドでは普通解雇・懲戒解雇の二種類があり、それぞれ求められる手続き・要件 が異なります。しかも、その手続きが、その労 働者がWorkmanのカテゴリーに該当するのか、 Non-Workmanのカテゴリーに該当するのかで手続きが異なる場合があります。さらに、州によって法律が要求する手続きが異なることが通常です。このように、解雇にまつわる法規制は 非常に複雑であり、そのインド人労働者を解雇する場合に、法的にどのような手続きを経る必 要があるのか慎重に・正確に把握する必要があ ります。
なお、日本と異なり、労働審判はすぐに解決 せず、一審だけでも数年かかることは稀でなく、 時間・コストがかかります。しかも、インドの労働審判所は労働者よりの判断を下しがちです。 このような点も考えながら、どのように解雇・ 自主退職といった問題に向かい合う必要もあり ます。