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フィリピンにおける税制改正

Thursday August 2nd, 2018Manila

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はじめに

フィリピンでは20年ぶりに税制改正が実施され、18年1月から共和国法第10963号(Republic Act No.10963)において税制改革法が施行されており、一連の税制改正におけるパッケージ第一弾として注目されている。

現在のドゥテルテ政権は中長期ビジョンとして貧困率の低下と年間国民所得の増加を掲げており、今回の税制改正がその実現に向けた第一歩となっている。

具体的には2040年までに貧困の撲滅および一人当たりの国民総所得(GNI12,000ドルを目標としており、現在の高いGDP成長率を維持しつつ、国際競争力向上に向けた巨額のインフラ投資を筆頭に、教育、健康、社会保障等への投資が必須となる。そのためには大幅な追加投資が必要であり、これらの投資を補うための歳入確保が今回の税制改正の主な目的である。

今回は多くの在比日系企業に関連する可能性がある改正内容に絞って紹介する。

 

個人所得税

税制改正前後の所得税における税率テーブルを表1にて紹介する。

【表1】個人所得税テーブル比較

FCPH税制改正_画像

 

フィリピン人納税者の多くが免税となり、ほとんど全ての納税者の手取り額が増加することになる。

最高税率は従前の32%から35%に引き上げられており、高額所得者により多くの税金を負担させ、中間所得者層を増やして貧困率を下げようとする政権の意図が反映されている。

 

付加給付税

付加給付税については今回の税制改正に伴い、税率が32%から35%に変更となっている。

付加給付とは一般社員(マネジャーやスーパーバイザーなどの職位を持たない社員を指す)以外に与えられる物品や役務等の手当のことで、多くは駐在員の住宅補助、車両、ゴルフ会員権などが該当する。

このように付加給付税は幅広く企業の福利厚生に課せられる税金であり、場合によっては付加給付として支給するよりも個人所得に含めた方が税金費用としては抑えられることも考えられ、今後付加給付の支給方法の変更を検討する必要がある可能性がある。

 

源泉税

源泉税については主に給与に対する源泉税、対象項目を幅広く設定している拡大源泉税、借入金等にかかる利息に対して課税される最終源泉税がある。

今回の税制改正では給与に係る源泉税を除き、月次での申告から四半期ごとの申告に変更となったことに注目したい。

改正前は源泉税の月次での申告は、毎月月末締め後翌月10日までに申告および納税しなければならず、1日でも申告が遅延すると罰金が発生するという、多くの納税者にとって非常に大きな事務負担であったため、納税者に対する事務負担は大幅に軽減されたかに思われた。ところが、18年1月31日付けでフィリピン内国歳入庁(BIRBureau of Internal Revenue)がTax Advisoryを公表、さらにRevenue Regulation No.11-2018を発表し今まで通り月次での申告納税を求めることが明確となった。

 

最後に

今回は20年ぶりとなる税制改正における在比日系企業に関連する可能性のある主な点について紹介した。

現ドゥテルテ政権の中長期ビジョン達成に向けた具体的なアクションプランの下支えとなる大改正であるが、個人所得税は大幅減税方向とはなったものの、それでも高額所得者の所得税率及び付加給付税率のアップなどフィリピンに進出する日系企業にとってはコストアップを強いられる可能性は否定できない内容も含まれているため注意が必要である。

今回の税制改正を受けて在比日系企業、または今後比国への進出を検討されている企業においては、税務専門家等に相談しながら今後のフィリピンでの事業運営の在り方について慎重に検討することをお勧めする。