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2018年06月30日インド
前稿では、インドにおける雇用契約の解消方法の種類とその特徴について説明しましたが、本稿では、インドにおける辞職(Resignation) について解説します。
さて、インドにおいて従業員を辞めさせようと考える場合に、まずは辞職( 従業員の自らの意思に基づく退職) による雇用契約の解消が可能かどうか検討することが望ましいと言えます。
辞職による雇用契約の解消には、
(1) 後に従業員から訴えられる可能性が低い、
(2) 訴えられたとしても解雇の場合と比較して争いやすい、
(3) 解雇補償金を支払う必要が少ないなどのメリットがあります。
まず、(1) についてですが、使用者が一方的に労働契約を解消する解雇の場合、これを不満と考えた従業員が後に裁判を提起するケースがインドでは特に多く見られますが、自分の意思で退職する辞職の場合、解雇の場合と比較して裁判にまで発展するケースが少ないと言えます。
次に、(2) についてですが、辞職の場合であっても裁判に発展するケースが少ないとはいえ、ゼロではなく、無理やり辞職させられたと考えた従業員が裁判を起こすケースもあり得ます。
もっとも、普通解雇であれ、懲戒解雇であれ、解雇の有効性を使用者が裁判で争うことは容易ではありませんが、辞職の場合の主な争点は“自らの意思で退職したのか” という点に絞られるケースが多く、従業員が自らの意思で辞職したことを裏付ける形でしっかりとドキュメンテーションを行えば、裁判に発展する可能性は低く、仮に裁判になったとしても十分に争えるケースが多いといえます。他方で、会社が退職届を準備し、従業員を呼び出しその場で退職
届にサインさせるようなことは、後々紛争に発展する可能性が高く避けるべきといえます。
そして、(3) についてですが、普通解雇を有効に行うためには解雇補償金の支払いが必要となる場合がありますが、辞職の場合にはこれを支払う必要がありません( ただし、Payment of Gratuity Act,1972 に基づく退職金は支払う必要あり)。とはいえ、円滑な辞職を実現するために、通常の退職金に色をつけることはよく行われています。